リンパ温熱療法士テキスト
温熱療法について
温熱療法は文字通り体を温める事による治療です。
そのルーツは非常に古く、動物や原始人が温泉で暖めたり、太陽に当たって癒す事から始まっております。
どのような温度でどのような暖め方で何が違うのか、暖める事によりどのような変化が身体に起こるかを順番に覚えていきます。
感染症などで高熱を患ったがん患者さんの腫瘍が消えることがあると言うようなことが、古くから分かっていました。
それ以来、どうして熱が癌をおさえるのか? どういう熱ががんを退治するのにいいのか? どういう方法で温めるのがいいのかが研究されてきました。
また最近は免疫や抗癌剤や放射線の治療効果をあげることもわかってきました。
理論
温熱療法が効果である根拠として、次のようなことが考えられる。
経絡:気の流れ(経絡)には「ツボ」があり、そのツボから気が出入りすると考えられる。ところが、そのツボを中心に気の流れが滞り病気になる。熱刺激によって、気の流れをスムーズにするのが治療目的である。
リンパ系:脈管系には動脈・静脈・リンパ管が存在し、身体の中に流れる液体成分は全てこれらの脈管系を流れる。動脈を上水道、静脈を下水道に見立てれば、リンパ管は下水道の手前の「排水溝」に例えることができる。この排水溝を熱刺激できれいにするのが目的である。
血管系:熱刺激によって、動脈も静脈も拡張する。拡張すれば血流が増加し、循環が良くなる。循環の悪い状態を瘀血(おけつ)状態と呼ぶが、血管拡張作用によって、この瘀血が改善される。
炎症理論:炎症は、生体内・生体外からのあらゆる刺激に対する生体反応である。その反応の主体は免疫システムの発動である。温熱刺激が免疫システムのスイッチを入れると考える。
がんの治療:がん細胞は、血流が少なく熱に弱いことを利用したものである。
各種温熱療法
温熱療法も熱源別とか目的別にかなり種類が色々あります。
フジカの温浴ドームを筆頭に赤外線光線温熱、温灸、テルミー、温泉入浴、
三井式温熱療法、ハイパーサーミア、電磁波、超音波、等々数えたら限がありませんが、それだけ熱を加える事によって効果があるということなのです。
効果の大小はともかく温熱をすれば誰でも高確率で効果が上げられるのです。
その中でもリンパ整体や経絡との関係で、いっそう簡単に達人級の治療が出来るのがリンパ温熱療法なのです。
まずは温熱のあれこれを覚えて下さい。
癌は熱に弱い
がん細胞によらず、正常の私たちの細胞も、熱が高くなると機能を停止し、破壊されていきます。しかし正常組織では温度が上がると、その中をながれる血管がひろがってたくさんの血液をながして、熱を外へにがし細胞を破壊から守ります。
しかし癌組織の血管は温度があがっても血液の流れがふえないため、熱が中にこもって高温となり癌組織は破壊されるわけです。
これ以外にも、熱により、p53といわれる癌抑制遺伝子に異常がおこりアポトーシスというがん細胞の死亡をおこすことがわかっています。
温熱といっても、肝臓癌を焼ききる放射線のような高温ではなく、42,5度でがん細胞は死ぬといわれております。
そのくらいなら熱い風呂に少し我慢して入ったらいいと思われるかもしれませんが、体全体が42度以上になるのは大変危険です。
温熱療法が放射線の効果を高めることは、昔からわかっていました。抗癌剤も温熱と併用すると効果が上ります。
これは温熱により癌組織への抗癌剤の取り込みがよくなることによります。
さらに最近注目されているのが免疫療法とのかかわりです。
温熱と免疫が大きくかかわっていることがわかってきました。
熱を加えると
- HLAという物質が癌表面にたくさんでて、癌がここにあるぞというのがわかりやすくなり免疫細胞が攻撃しやすくなった。
- リンパ球(NK細胞やT細胞など)が増え、しかも癌を殺す力が強くなった。
- 癌の転移をひきおこす物質がすくなくなった。
等々、温熱療法が免疫力を増強して癌の抑制に働き、免疫療法との併用が癌治療に効果があり、しかも副作用がほとんどありません。
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温熱の作用機序 効果
血管拡張作用 血流増加(O2・栄養の供給,老廃物,炎症,発痛物質の除去)
全身加温では血圧低下,心拍出量増加(全身の血流改善)
コラーゲン線維柔軟化作用 拘縮の改善,
筋・軟部組織の伸展性増加
代謝促進作用 好気的代謝の促進
炎症の悪化
末梢神経作用 快適温度刺激によるリラックス
鎮痛(C-fiberへの干渉)
遠隔部・深部の血流改善(交感性血管拡張)
高温では熱刺激作用
中枢神経作用 視床下部温度中枢刺激による発汗
血管拡張
その他 全身浴・連浴で内分泌系,免疫・代謝系への作用(サイトカイン・ヒートショック蛋白)
神経伝達速度
神経伝達速度に病気以外で影響を与えるものには以下のものがある。
- 温度
皮下深部温度の低下1℃ごとに約5%,あるいは1.8~4m/sec低下すると報告されている。 - 年齢
新生児は成人正常値の約半分,2歳で正常下限値になり,4歳で成人正常値に達するといわれている。
また、年齢が高くなると低下するといわれるが,Norrisによれば,60歳以降10年ごとに1.5%ずつ低下すると報告されている。 - 身長
Campbellによれば,身長が高くなるに従い四肢末梢の神経伝達速度が低下すると報告されている。
赤外線温熱
赤外線は紫外線に比べて皮膚透過性が大きい.
放射熱である.
表在性温熱.
<効果>
皮膚への緩和な温感,深部皮膚血管の拡張に加え,充血を起こして鎮痛的に作用するとともに,炎症産物の吸収効果もある。
可視光線に近い波長0,7~1,3μmのものを近赤外線,3~8μmのを中赤外線,14μm以上を遠赤外線という。
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最近はあまり見かけなくなりましたが、昔ながらの水銀体温計には41℃までしか目盛が振ってありませんでした。これは、何を意味しているのでしょうか。じつはヒトの細胞は42.5(~43)℃以上に温度が上がると急速に死んでしまうので、体温が41℃以上に上がることはないのです。そこで、温熱療法はこの原理を利用して、“がん”細胞の温度だけを選択的に上昇させて、“がん”を死滅させてしまおうと考案された治療法です。
温熱療法の歴史は古く、熱によって“がん”が消滅したと、医学の父であるヒポクラテス(古代ギリシア,紀元前460-370年)は報告しています。ドイツのブッシュは丹毒に冒され高熱を発した患者さんの“がん”が消失したことを1866年に報告しています。また、アメリカのコーリーは、感染すると高熱を出す数種類の細菌をわざとがん患者さんに注射して、高熱によって手遅れの“がん”の治療を行ったと1900年頃に報告しています。1960年代になって科学技術が進歩すると、有効な加温の方法が開発されるとともに、“がん”に対する温熱の効果が基礎研究によって明らかにされ始めました。
温熱療法の生物学的効果
すでに述べたように42.5℃以上になると“がん”細胞は死んでいきます。しかし、“がん”細胞の周囲にある正常な細胞も温められて死んでしまうのではないかと危惧される方も多いかと思います。どうして正常な細胞は死なないのでしょうか。じつは正常組織では、がん組織と同じようには温められても、血管が拡張して血液がいっぱい流れることによって、血液が車のラジエーターのように熱を運び去ってくれるのです。ところが、“がん”組織の中にある血管は温められても拡張することができないので、ラジエーターの壊れた車のようにオーバーヒートしてしまい、“がん”細胞だけが温められ死んでいくのです。
しかし、“がん”細胞もただ黙って死んでいくわけではありません。当然、熱による障害を軽くしようとする機構が備わっています。温められてタンパク質が変性すると,熱ショックタンパク 70(Heat Shock Protein 70: HSP70)と呼ばれるタンパク質を産生して、熱による攻撃に立ち向かう態勢を作り、傷ついた細胞を修復していきます。HSP70は熱の攻撃だけでなく、様々な攻撃すなわち様々なストレスによって細胞に発現してきます。一回、温熱療法を行なうとHSP70が発現し、“がん”細胞を熱の攻撃から守っていますので、終了後すぐにもう一回温熱療法を繰り返しても、同じような効果は望めません。このことを温熱耐性と呼んでいます。そこで、HSP70の発現が減少してくるのを待って、2回目の温熱療法を行なった方が、より大きな効果が期待できるのです。こうしたことから、温熱療法は週に1回から3回ぐらいのペースで行うことが多いのです。
“がん”細胞を42.5℃以上に温めることは容易なことではありません。では、“がん”細胞を42.5℃以上に温めることができないと温熱療法は全く効果がないのでしょうか。いいえ、決してそんなことはありません。42.5℃以上にならなくても温熱は様々な効果を“がん”細胞にもたらすことが知られています。放射線や抗癌剤の効果を高めたり、最近では免疫力を高めることも報告されています。
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HSP(ヒートショックプロテイン)という言葉を聞くようになりましたが、熱変質蛋白の事で、分かりやすく言うと、卵を茹でると卵白が白く固まるのが熱によるたんぱく質の変質なのです。
しかし人の身体でこれでは単なる火傷ですが、その前の段階で壊れかけた蛋白質が次のたんぱく質を作る補助(分子シャペロン)をしてくれたり、材料になったりします。
人間の体の中には約60兆個もの細胞がありますが、細胞だけではなく細胞を作っている蛋白質も順番に壊れては作られています。そして作られる時の材料は大体90%位がリサイクルで壊された物から使用されています。 後の10%が食事から吸収された栄養分からです。
血流と自立神経刺激
熱を加えることにより血流の悪い細胞は冷却出来ない為、温度が上がり悪い細胞だけが選択的に死滅してしまうという治療法です。
人体から放射されている波長と同じ、約8μmから14μmの熱赤外線(遠赤外線の分類)を放射するアイロンのようなコテ状の独自の温熱治療器(医療用具認可)を身体に当て注熱することにより疲労回復・血行をよくする・筋肉の疲れをとる・神経痛、筋肉痛の痛みの緩解などに効果があるとされています。
人間の身体組織は.熱で動く。失われた熱を補充して全身のバランスをとる。
血液、リンパ、ホルモン,気…。人間の身体にはさまざまなものが流れています。
これらが正常に流れ機能しているからこそ、人間の組織はいつも生き生きとして健康が保たれているわけです。
人間の生命活動をエネルギーによるもととすれば、身体は熱で動いているといえます。
しかしストレスがたまると生命の源である熱が失われ、活力がなくなると身体の機能が低下し、病気を引き起こしてしまいます。
現代人はストレスや不規則な生活により熱をどんどん喪失しています。
女性や子供を中心とした低体温は、抵抗力の衰えを示すもので、病気にかかりやすい状態を自ら作っているともいえます。
生命の源である熱を体に補充していくことが健康回復、健康維持に望ましい第一のものと考え、生命現象を営んでいる中枢である脳脊髄神経と自律神経に熱を与えようとするのが基本になる温熱療法の原理です。
そうすることで、体中に活気を取り戻し、自律神経のバランスを正常に機能るように促すことが出来るのです。
皮膚と内蔵機能は相関関係にあります。内蔵機能の低下だけでなく、血流の停滞など生体現象がスムーズに行われていない部位の表面は緊張し、筋肉が硬くなります。これを内臓皮膚反射といい、熱がこれを察知し、熱さとして感じられます。反応部への適度な熱刺激によって、健康体へと導いていきます。
全身をくまなく温めるのではなく、その人その人の冷えた場所をみつけ、そこに熱を注ぎ込みながら、全身の筋肉のバランスを整えていくこの療法の持つ可能性は限りないものがあります。不定愁訴や難病に苦しんでおられる方は、ぜひ熱の持つ不思議さを体験してみていただきたいと思います。
リンパ温熱療法
温熱理論にリンパ系の熱利用を加味して出来たのがリンパ温熱療法です。
医学的にもリンパに関してはまだまだ分かっていない事が多く、実は温熱療法もヒートショックプロテインがどのようにして出来るのかがまだよくわかっておりません。
しかし、予防医学のリンパ整体と治癒を目的とする温熱療法が目指すところは全ての人の健康管理です。
食事療法と温熱療法を併用しないと効果は初めだけ良く予後は落ちてきます。これは初めの温熱療法のやり方がまずいか、症状が進んでいる証拠なのですが、食事療法を加えると効果はとても上がります。
しかし、健康維持に置き換えた場合、中々続けてはいけません。
リンパ整体ならリラクゼーションとして続けられますし、病気によっては治療にも使えます。
しかも、リンパ整体に温熱療法を加えると内蔵まで暖める事が出来るのです。
禁 忌
温熱では,心拍出量の増加と交感神経枝激により血圧が上昇し,静脈還流の増加による静脈圧も増加するので,うっ血性心不全者には注意が必要である.しかし,不感温度付近では末梢血管の拡張やA-Vshuntsの開放により,末梢抵抗が減少して心負荷の増加はもたらさない.
リンパ温熱療法施術
基礎治療
背骨の左右に自立神経が通っています。そこを中心に背中全体に予熱をかけて暖める事から入ります。
これを大事で、後の施術に対する効果が違ってきますので、十分に予熱をして下さい。
その時に血流が悪いところは異常に熱く感じます。その場所を覚えておいて下さい。
治療中、治療後の注意
- 熱に弱い人は低音火傷に気をつける
- 治療後はだるくなる場合がある
- 治療後発熱がある場合は頭だけを冷やし、熱さましは禁止
- 風呂は8時間以上たってから
- 温熱治療で栄養分が消費するので補充を心がける
- 必ず図を参照しつながりと流れを確認する事
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- 「脳」 頚椎、後頭部。脳下垂体、眉間
- 「言語障害」左大脳 *肩を温め凝りを取る(これはすべての部位で必要ですので以後省略)
- 「喉頭」喉全体に注熱。咽頭癌は顎下。頸部、後頭部。疣があったら焼きとる
- 「甲状腺」喉の両側。耳の後ろ。リンパ腺。後頭部。副腎。
- 「食道」噴門部から咽頭まで温熱器を当てて癌の場所を特定する多くは噴門部と食道上部 *治療効果大
- 「胃」反応があるところだけではなく胃部全体に注熱。背中からも注熱する。
胃の場合他の臓器に及んでいる事が多いので、十二指腸は元より肝臓や肺にまで注熱をする。 - 「肺」
腕の凝りや三角筋、肩甲骨の凝りが肺の血流を悪くする為、その部分に指圧と温熱を平行して行う。胸部の熱く感じた所に注熱。鎖骨下。二の腕外側に念入りに注熱する(ツボがある)
*治療効果大 - 「十二指腸」 右の横腹、臍の周り、背中の胸椎5番から12番あたりと十二指腸の後ろ、肝臓
- 「肝臓」 直腸や大腸、十二指腸の関連あり、右上腹部、右肋骨下、右背中肩甲骨から腎臓にかけて
- 「すい臓」 左側背部、鳩尾、副腎、小腸
- 「大腸」 左鼠茎部、へそ下下腹部、盲腸、十二指腸、腰椎から臀部、肛門に至るまで
- 「子宮、卵巣」 恥骨、鼠径部、甲状腺、膣の入り口全体、下腹部
- 「糖尿」(ホルモン系)後頭部、副腎、左腹部(脾臓)、甲状腺
半身浴や温浴ドーム等身体の熱を上げることにより糖質と蛋白質の結合を促進する - 「腰痛」 背筋、腹筋、小腸、肩甲骨下、足上後部
- 「風邪」喉、胸、肩、肩甲骨から後頭部にかけて
- 「脳梗塞、脳血栓」基礎治療は特に丁寧に行う、足の裏、特に湧泉、頭と肩こりは丁寧に行う、鎖骨から喉
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