リンパ整体テキスト

・・・前文略・・・

「リンパマッサージ」とは正確には「リンパ液循環促進整体法」の事で、ルーツは痛いところを手で摩る事から世界中で療法として高められたようです。特に近代に入って癌の転移の多くがリンパにより起こると考えられて手術時リンパ節も切除するようになりましたが、副作用で術後30~40%の患者に浮腫が見られるようになり、海外の正当な医学界では発生する浮腫を取る事で認められていったようです。

今では浮腫治療よりもリンパ器関自体に医学的興味は移っているようですが、リンパだけの専門科医というのは無く、内科とか外科とか循環器科とかそれぞれ分かれております。

しかしすべての臓器や全身にリンパ管は張り巡らされていますので、本来は部位別に見る西洋医学よりも東洋医学的見地で見た方が分かりやすいのかも知れませんし、西洋医学でリンパの研究自体あまりされていなかったのも、そのあたりに原因があるのかもしれません。

最近になって医学的にも少しずつ分析が進み、現在行っているリンパマッサージの間違った理論や方法を少しずつ改善しなければいけなくなってきています。

このテキストは最新医学と各種の伝承リンパ手技と自然療法の集中研究により、統合されたリンパ整体理論の集大成から抜粋しています。

リンパ整体について

目 的

目的は痛みをとる事や浮腫みを取る事、の治療補助と健康バランスを整える事、の予防医学です。

基 本

  1. リンパ液が存在するところに手で圧をかけることによって、リンパ液を流れやすくする事
  2. 基幹に入って深いところを通って帰ってくるリンパ管にうまく圧がかかるようにしてやり、循環の促進を促す事
  3. リンパの詰まりによる(手術による節切除も含む)循環不全に、ルートを作る事
  4. 内臓のリンパ器官を刺激して自立神経の正常化を促進する事

以上の4つがリンパ整体法の基本となります。

初めに、身体のどの部分にどういう働きをする器官があるかを覚えて下さい。
位置関係は覚えていないと危険な事を知らず知らずに行っている事も良くある事ですのでしっかり覚えておいて下さい。

身体の構造

内 臓

人体は大きく、頭、頸、体幹(胸・腹・背・会陰(えいん))、体肢(上肢・下肢)の4種に区分されますが、体の主要器官の大半は体幹の中におさまっています。

さらに体幹の内腔は、横隔膜が境となっていて、胸腔内臓と腹腔内臓とに区分されています。
前は胸骨、後ろは胸椎、左右は左右の肺、下は横隔膜に囲まれた、胸部の中央部を縦隔といいます。ここに心臓、食道、気管などが位置しています。

胸腔には左右の肺と心臓があり、その上部には食道や気管が通っています。
腹腔の上腹部には胃・十二指腸、肝臓・胆嚢、膵臓・脾臓があります。
肝臓、膵臓、脾臓などは、特有の組織でつまっている状態ですので、実質臓器といいます。

胃や小腸・大腸は内部が管腔になっており、中空器官といいます。この管腔内に食物を通すので消化管といわれています。医学的には中空器管内は体外とされています。

それぞれの場所の外から見た位置を覚えておきましょう。

心 臓

心臓は胸の真ん中から胸骨剣状突起の少し上位にあり下部は少し左へ広がり、一番動きが激しい部分は心尖部と呼ばれる先端部分でみぞおちの左上位にある拍動を感じるところです。横隔膜と接しています。

食道、気管

胸骨の後ろで、肺に挟まれるように心臓があり、心臓の後ろに、食道と気管があります。気管が前、食道が後ろ(背中側)です。
食道の後ろは胸椎(背骨の胸の高さの部分)です。食道は更に下降して、横隔膜を食道裂孔で通り抜けて胃に達します。

肝 臓

肝臓はおなかの上部でみぞおちの右にあり、実質臓器では脳よりも大きく最大の臓器です。上は横隔膜に接し下は胃や十二指腸に接しています。

胃は、上半分は中心よりやや左上腹部で肋骨に隠れて外から触る事は出来ません、下部は食前は臍の近くまでの位置にあるのですが食後は胃が伸展して臍より下がります。

十二指腸

胃の下部右(出口)は十二指腸がつながっています。

大 腸

胃の下部のすぐ下には左右に横行結腸が横に伸びています。
その右側から下に伸びているのが上行結腸、その一番下が盲腸、左側から下へ伸びているのが下行結腸です。下行結腸の下は真ん中まできて直腸につながっています。

小腸、子宮

大腸(結腸)に周りを囲まれて小腸がありますが女性は中心部に子宮があり守るように小腸が取り巻いています。
小腸は非常に大事な器官で第2の脳とも云われ生命そのものを司るところです。

腎 臓

腎臓は腹腔の背面にあり、肋骨の一番下のラインが腎臓の下部に近く背骨をはさんで左右一対、2個ある臓器です。当人のこぶし大の大きさで、ソラマメ状の形をしていて右側の腎臓が少し下がっています。

副 腎

腎臓の上に帽子を被った様に隣接しますが、直接の内部接続は無い。
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リンパと血液

リンパは血液から出てきます。
血は「赤血球」「白血球」「血小板」「血漿(けっしょう)」4種類で構成されていますが、このうち3つは球とか板とか呼ぶだけあって固体です。最後の1つは液体です。
割合は固体成分が45%くらい、液体成分である血漿が55%くらいです。
固体成分の内約98%が赤血球で、白血球は1.5%くらい、血小板は0.5%くらいです。
血漿は生体水に多くの物質が溶けていて、成分は水が90%、蛋白質が約7~8%、糖質約0.1%脂質約1%無機質約0.9%と言う構成です。

そして、血液全体に対して固体成分が少ないことを「貧血」、血漿が少ないことを「脱水」といいます、これは割合(%)に対する呼び名ですので、貧血と脱水が両方起こってしまうと、血液そのものの量が少なくなってしまったということで「乏血」と呼びます。

心臓と血管

血液は、心臓と血管を通って、体中を廻っています。
ご存知の通り、心臓は血液を押し出すポンプの役割をしています。心臓が止まってしまうと、血液の流れも止まってしまい、酸素が体に運ばれなくなってしまいます。酸素がなければ動物は死んでしまいますから、酸素を運ぶポンプである心臓を動かすために、体はたくさんの栄養を使います。ちなみに、心臓は筋肉です。

血管には2種類あります。動脈や静脈と呼ばれる大きな血管と、毛細血管と呼ばれる小さな血管です。大きな血管は、心臓とつながっているので壁もしっかりしています。
大動脈は心臓から出た後、いったん上昇し、頭部や腕への動脈を分岐しつつヘアピンカーブを描いて中央側へ近寄りながら下降し、横隔膜のあたりでほぼ中央に戻り、更に下降していきます。

毛細血管は動脈から枝分かれした小さな血管です。毛細血管はとても細かい穴が開いた壁でできているため、血液の液体成分である血漿は通り抜けることができます
固体成分は穴より大きいため通り抜けることはできません。血漿には栄養分が溶けていて、毛細血管を通り抜けた血漿は細胞内に入って栄養分を渡し、生命活動で出来たゴミを持って静脈に帰っていきます。
大きな血管は、単なる血液の通り道ですが、小さな血管は血液の通り道としての他に、栄養分とゴミの交換所としての役割もあります。

リンパ管

そして静脈で回収しきれない種類のゴミや体外からの異物、細胞や細菌の屍骸または細菌そのものの様に、直接血管の循環器に戻すと体への負担が大き過ぎる物を回収するのがリンパ管であり血液を流さない静脈補助ルートです。
この補助ルートが免疫の舞台となり、組織や器官をすべてつなぎ、総称して「リンパ系」といいます。
免疫細胞が生まれ成熟する場所である骨髄や胸腺、胎児期の肝臓などを1次リンパ系といい、免疫細胞が活躍するリンパ管やリンパ節、脾臓、扁桃などは2次リンパ系といいます。

リンパ管は内側に開く特殊な構造の弁が管壁になっていてリンパ管の外の間質液が多くなるとその水圧でリンパ管に流入します。
リンパ管に流入した液はリンパ液となります。リンパ管が一杯になると自立神経が働いて一気に萎みリンパ液を流そうとします、リンパ管の中には対になった弁が細かく付いて逆流しないようになっていて順当な流れが生じるのです。1分間に約3回~7回の収縮があります。 ちなみに、静脈も内側に弁が付いていて逆流しないようになっています。静脈の収縮は1分間に12回~17回位で規則正しく収縮しています。

リンパ液と一緒に流れ込んだ細菌やウィルスは流れに乗ってリンパ節に運ばれ多種の免疫細胞によって攻撃を受け異物が排除されたリンパ液はろ過されて静脈に戻ります。

リンパ系は回収だけではなく色々な生命維持活動に貢献しています。

栄養分の吸収は基本的に小腸で行われ血液で分配しますが、脂肪分はリンパの仕事となります。

体が健康を維持する為には、食物を小腸で吸収されやすい様に低分子レベルまで消化分解し、必要な栄養分は腸管上皮細胞から吸収されます。
小腸の食べ物が通る内側の壁には小さなイボイボ(柔毛と呼びます)がたくさんたくさんついていて、平らでいるよりも表面積が大きくなるように考えられています。そしてそのイボイボの一つ一つに毛細血管が細かく張り巡らされ、できるだけたくさんの栄養分を血液中の血漿が受け取れるように窓口を大きく取っています。
脂肪は小腸内にある消化物から粘膜内にある乳薇管という特別なリンパ管へ吸収されます。そして小腸壁内部のリンパ叢(リンパ管の網状組織)へ入り、腸間膜リンパ節へ送られ深部腸骨リンパ節を経由して乳薇叢に送られます。
乳薇叢から胸管リンパ本管を通って鎖骨の下で静脈に流入します。

中年以後、免疫系器官の中心は胸腺から腸管リンパ組織へ移行します。
小腸末端壁にはパイエル板と呼ばれる腸管組織があり、腸管免疫の主役です。
これに対し、免疫乳酸菌やアガリクスのβ-グルカンなど免疫賦活剤BRMは消化分解されず、大きな分子のまま腸まで到達します。
パイエル板は大きい分子の物質を異物として認識して、そのまま取り込む特別な器官が多数存在します。
生体はパイエル板で認識した異物に対して、・・・・・ 略

リンパ整体による身体への作用

手技によるリンパ液循環促進整体法(以後リンパ整体とします)はリンパの流れを潤滑にする単純な技術です、外部からの圧力によってリンパ循環を促進する事で色々な作用があります。
通常よく宣伝しているのが、「美容」「リラクゼーション」「疲労改善」「冷え性」「むくみ、たるみ」「ダイエット効果」「セルライト除去」「免疫力強化」等に効果的といわれておりますが、大きく分けて次の4つの作用が大事です。

  1. 自立神経の緊張を副交感神経に刺激を与えリラックスできる事
  2. 痛みの感覚の緩和
  3. 免疫促進
  4. リンパ液の流量と共に血液の流量も血管が広がる事により増える

海外の医学分野でも次のような目的を持って行われております。
* 浮腫の軽減、リンパ切除後の浮腫を新しい道が出来るようにする

  • 外傷の皮膚再生促進
  • 皮膚炎症の軽減(細菌感染以外)
  1. 運動不足による代謝改善
  2. 解毒促進
  3. 水分代謝改善
  4. 病気治療時の補完医療

自立神経について

人は生きている限り、外界からさまざまな刺激(ストレス)を受けます。
このストレスに対して、適当な行動を起こさなければ、危機に陥り最悪の場合はその生存が許されない事態も起こりえるのです。
ストレスに対して、反応するのが、自律神経系であり、自律神経系は交感神経、副交感神経がそれぞれ拮抗する作用をもち、生体を統御しています。
この自律神経系は体のあらゆる臓器に及んでおり、その臓器の動きを支配しています。副交感神経と交感神経は正反対の働きをしています。
交感神経は起きている時、積極的に動いている時にそれに合うように身体を能動的に動かします。

副交感神経は、眠っている時や自宅でのんびり体を休める時に適した体の状態を作ります。また、食事(消化や吸収)、排泄(排尿や排便)、睡眠など、体のメンテナンスに必要な生命を維持する大切な作業を司っている非常に大事なものです。現在の生活習慣病の多くが副交感神経の支配不足による自立神経失調症からきていると言われています。
要するに切り替えがうまくいかず眠れないとか眠りが浅い等は運動会の前日興奮して眠れないのと同じ原理です。
リラックスすると免疫力も上がりますから、相乗効果として考えられ、リンパ整体の奥深い効果の片鱗を垣間見るようです。

美 容

美容に関してはご存知の方も多いと思いますが、人気は顔のリンパを流してやると小顔になる、足も細くなる、ウェストも細くなる、脂肪を流せるのもリンパだけ、血流も良くなるから肌も綺麗になる、等々どの分野にも非常に貢献できるのがリンパ整体です。

免疫と注意事項

気をつけなければいけないのは、リンパシステムは最後の防衛線だという事です。ここで負けると敗血症となり最悪の場合死に至ります。
リンパ整体で免疫を上げるという事は

  1. 細菌の発見を早くし、増殖が活発になる前に抗体を作らせる。
  2. 老廃物を流して免疫細胞が「細菌」「病気の細胞」を見つけやすくする。
  3. リンパ管の中の老廃物を流して綺麗にすると血管からの滲み出し量多くなり、リンパ管への流入量も増える事で循環がスムーズに行われるようになる。

これらのことから、身体の免疫を上げながらリンパマッサージを行うようにする事こそが、理想的な予防医学になります。
身体の免疫が弱っている患者への施術は美容の面でも気をつけなければいけません。

各リンパ節の働き

リンパ節は大人で全身に約800箇所あります。
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リンパ整体術

リンパ管は、皮膚系と内臓系に主に分布しています。

【皮膚系リンパ循環促進整体法】

皮膚に分布しているリンパ組織は非常に弱い管ですから特にやさしく行いましょう。
施術の方向は、各リンパ節系部所毎に、リンパ施術図を確認しながら流れに沿って近くのリンパ節に向かって行います。
皮膚系リンパはやさしく皮膚を撫でるような刺激の方が、リンパはスムーズに流すことができますが、1つの箇所に1分間に10回位のリズムで施術を行い、リズムを変えないで回数を増やすとその後に流れる所のリンパ液が増え脂肪を流しやすくなりますので、元の節と繰り返し行います。
皮膚リンパはそのほとんどが真皮の組織中を網の目のように分布している毛細リンパ管です。毛細リンパ管は皮下集合リンパ管に接続しています。
筋肉内にはリンパ組織はありません。筋肉と筋肉の間を集合リンパ管が通ってリンパ節に接続しています。
集合リンパ管(皮下組織)からリンパ節(間接や骨、動脈)に向けては毛細リンパ(真皮)よりも少し圧を加え流します。

【深部系リンパ循環促進整体法】

皮膚リンパ系組織は静脈に沿って比較的浅いところを通っていて手技による施術が軽い皮膚への刺激だけで流れますが、基幹リンパ管は身体の深いところを骨や動脈に沿って流れています。
刺激を与えられる場所が限られるので方向鎖骨側の節に向かって押す感覚で圧を強めに行います。

内臓と脚のリンパ管は動脈に沿って乳糜槽にゅうびそうに入り胸管に流入してきますので、鳩尾方向に向かって上部から下部に∧(表現の都合上Aとします)のイメージで行っていきます。

*施術方法は実技編参照

【腸間リンパ刺激整体法】

腸間リンパ刺激整体法は腸にある腸間膜リンパ節の循環促進とパイエル版への刺激です。
固まっている(かけている)腸から吸収された脂肪分の分解促進の手助けをする事。腸間膜リンパ節への刺激で蠕動運動の促進を図る事。
免疫活性の司令塔への刺激で免疫活性の手助けをする事。
を基本とします。
皮膚リンパ系の循環促進法と違って、内臓自体に間接的刺激を与えます。
場所が重要で、各内臓(胃、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、腸、生殖器)の位置関係や大きさ、またそれぞれの内臓の働きを把握し消化のリズムに影響を与えないように行いましょう。

深部リンパ循環促進整体法の乳薇層から胸管へ流すリンパ整体法と腸間リンパ刺激整体法は場所も方法も違います。
ホルモンバランスが悪い女性の場合、脂肪分を流すのでコレステロールが増えホルモンが一時的に多くなり異常出血を起こす事があります。

皮膚リンパ系も深部リンパ系もリンパ液は血液のように早く流れませんのでゆっくりとしたスピードでの施術が大事です。
皮膚系リンパ管は特に非常に柔らかで薄く、しかも構造が複雑なので強く押すと壊れます、壊れたら修復は早いのですが、何日かは浮腫みが出る事も多いので強く激しいマッサージはやめてリンパ整体専用ジェルの粘度と柔らかさを十分利用しましょう。
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【腸間リンパの確認事項及び注意事項】

腸間リンパは他のリンパ系マッサージと比べて治療に近いので、十分知識を持って注意しながら行って下さい。
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腸間リンパは、慣れていない人や初めての場合は決して長時間の施術を行ってはいけません。少しずつ増やしていくようにしましょう。

腸に対する施術は使いこなせば効果絶大ですが、危険を伴う事を認識して下さい。